そもそも活性炭って何?
医薬品(クレメジン・コバルジン)と食品(ネフガード・ヘルスカーボン)の違いは?
それぞれの特性と利点、欠点、活性炭 1 のページで浮かんだ疑問について、医薬品の専門家であるテリーさんに解説していただきました。
薬の大前提
ご存知とは思うのですが、副作用のない薬はありません。
作用があれば、必ず副作用があると思ってください。
副作用がない薬というのは、反対に言えば、作用(効果)のない薬かもしれません。
人工的なものでも、天然のものでも、同じことです。
そもそも炭って何? ~ 原材料の違いについて
工業的に作られたものでも、天然由来のものでも、作用・副作用にはあまり関係ないと思います。
カーボンは、基本的に体内にまったく吸収されません。
また、吸着作用にだけ着目しますと、工業的に作られ、微量のその他の物質が含まれているもののほうが、吸着力が強いという報告もあるそうです。
一般に思われてるよりずっと多くのものが、工業的に作られていますし、気になさる必要はないと思います…
例をあげると、すうっとする成分、メントールが、ほとんど工業的に作られてるとか…だから、 北海道 のお土産のハッカ油はホントにハッカから作られてるので、高いんですね~(笑)
一般的に、自然のものが良いかというとそうではありません。
自然のものの中にはわからないことが数多く含まれてる(時にはそれが良い作用をもたらし、時にはそれが悪い作用をもたらすわけです)、ということも頭に入れておいたほうが良いかなあと思います。
漢方薬などがその代表例ですね。
なんで活性炭の原材料がイロイロあるの?と、思われるかもしれませんのでちょっと説明を。
すべての有機物をちょっと工夫して燃やすと、炭になります。
構造式や化学反応式を見れば一目瞭然なんですけど、炭っていうのはけっこうなんでもから作れちゃうんですよね!
微量の不純物の差はありますけど、炭は炭。
燃やせばできるっ。
そう思っちゃって大丈夫だと思います。
医療用医薬品として売り出すために必要な要素の一つは、原料がなるべく安く、大量に、恒久的に、質もそろって手に入れること!
現在、その条件をクリアするのが石油だった、ということですね!
それでもあんなに高いなんて (>_<")
炭を投与する意義
「透析導入までの期間の延長が認められている」という言葉が、クレメジン・コバルジンの「売り」としてありますよね?
同じ言葉を、シャンピニオンエキスの関連でも見られたことがあるのではないかしらと思います。
慢性腎不全は、猫さんに限らず、人間においても、「治らない病気」であり、「有効な治療薬がない病気」の一番手なんですが、そんなやっかいな病気に対して、「とってもよく効いて、命の長さを、はっきりと傍目にわかるほど伸ばす作用のある薬」であるということをあらわしています。
人間には透析があるじゃないか、と思われると思いますが、透析治療で伸ばすことのできる寿命は、限られます。
そして、ほとんどの場合、いかなる患者さんでも、延ばすことのできる最長年月っていうのは同じなんです。
もちろん、例外はあります。
生体はみんなそれぞれ違うので、統計データに当てはまらないケースというのは、常に存在します。
それに今後、あらたな治療法が発見されることは、充分ありえますが…それはおいといて。
そう!慢性腎不全の治療は、「いかにして透析導入までの期間を延ばすか?」にかかってるんですね。
ですので、透析導入までの期間を延ばすというのは、そのサプリメント、薬剤の有効性、効きようを計るときに、一つのキーワードになります。
クレメジン・コバルジン (石油製品)の構造とメリット・デメリット
クレメジンの優れているところは、その、開けた穴の大きさを、吸着してほしくない成分が吸着せず、なおかつ不必要な成分を吸着するようなサイズに統一し、なおかつ、穴をたくさーんあけてるということです。
球形にすることで表面積を増やしてもいます。
…ちょっと考えただけで、そりゃ大変な作業ですよねえ。
クレメジンが高価なのも、いつまでたっても呉羽化学しか作ってないのも、その特殊な穴あけ製法の難しさにあるんですね。
ただし、クレメジンに限らず、すべてのものに言えますが、穴の設計、ほんとに100%正確か?と言われたらそうじゃないです。
たとえば、消化酵素をクレメジンが吸着するかどうか?
という実験を、普通の活性炭と比較した試験が行われていますが、クレメジンはとっても吸着率が低いですが、ゼロではありません。
というわけで、いくら工夫されていても、所詮吸着剤。
だから、ながーいことクレメジンを投与してた場合、ちょっとずつちょっとずつビタミン、ホルモンなどが減っていって、結果として何かからだに悪いことがあるかもしれないよ、それはちょっとここではわからないので、長く投与すればするほど、全身状態をよく観察したほうがいいですよ、とクレメジンの説明書には書いてあります。
特に、いっしょに飲むお薬については、気をつけるべきですねー。
試験管の中での実験では、薬を吸着することがわかってます。
ただし、本当に体の中で吸着されるかどうかは、よくわかってません。
でも、吸着される可能性はかなり高いと思っても良いんじゃないかな?
できるなら他のお薬といっしょに飲ませないほうが良いと思います。
ネフガード・ヘルスカーボン (植物由来)の構造とメリット・デメリット
特許をとっている食物であるためか、詳しい分子構造などは明らかにされてません。
包接、という言葉が使われていることから、おそらくカーボン(炭)の分子と分子の間に、アルギン酸ナトリウムの分子が入り込む構造なのだと思います。
アルギン酸ナトリウムは昆布のぬるぬる成分、繊維成分だそうです。
よーするに、ネフガードが便秘しないと言われてるのは、ただ単に繊維質が入ってるからなんですね~ (^。^;)
繊維成分を入れてる以外は、ごく普通の活性炭なので、当然、活性炭の副作用は同じように起こるわけだから、もちろん便秘も起こります。
また、クレメジンほど細かい穴あけ整頓作用をしてませんから、大事なものも吸着される確立が、高いですよね。
繊維質に弱い猫さんなどは下痢や腹痛だって起こすと思います。
また、医薬品でない理由は簡単です。
医薬品としての承認をとるためには、ものすごくお金と時間がかかります。
医薬品として本当に有効かということを証明するのは非常に難しいのです。
ヘルスカーボンは、限りなく、現在使用されている活性炭に近いです。
アルギン酸をくっつけたくらいでは、クレメジンのように、加工によって特異的な性質を持ったとみなされることはないと思いますし、少なくとも、人の腎不全を改善すると明らかに示しているデータはとれてないと思います。
と、いうことで、自然の原料だから、作用が緩やか、体に優しい…という意味で、ネフガードを選択することはあまり意味がないと思います。
ちなみに、クレメジンの説明書には、胃や食道に、潰瘍や静脈瘤(血管にある、こぶで、それが破裂すると大出血する‥ってもんです)などがあったら気をつけろって書いてあります。
じゃりじゃりそのまま体内を通過するから刺激があるので、ってことです。
ネフガードもクレメジンも、体内ではほとんど同じ大きさの炭になりますので、ネフガードについても同じことが言えると思います。
以上、クレメジンのほうがネフガードより優れている!
と言わんがばかりの文章ですが…そうとも限らないんですね~。
現在、透析導入前の、慢性腎不全の患者さんに、クレメジンがばっかばか使われているかというと、そうではないのです。
実際患者さんに使われた場合、不要な物質をとってくれてる、その結果が、数値や症状の改善にはっきりあらわれてくる場合ばかりじゃないんですね。
どんなお薬でもそうですけど、100%どんな人にも効くお薬なんてありません。
また、人間に対しては、猫さんほど劇的な効果は期待できないと思います。
そして、猫さんにもいえることですが、なんといっても活性炭の副作用である便秘。
便秘しちゃったんじゃ意味がないどころか、かえってよくありません。
そして、なんとなく胸がつかえる、お腹が膨らむ、気持ち悪い感じ。
人間の場合、量を飲まないといけないので、余計におなかが膨れちゃう感じがするのです。
そうして、食事量が減ってしまえば、外から摂るエネルギー量が減り、体の中のたんぱく質がくずれて老廃物になっちゃって、腎臓に負担をかけてしまう…
ということで、もともと便秘のしやすい方、高齢者や、もともと食の細い方、非常にやせている方には処方はしない傾向にあります。
ただし、発売当初はおもいっきり使われ、少し時間が経つと、落ち着いた使用頻度になる、というのは、すべての新しく開発されたお薬に共通する経過なので、クレメジンも、やはり優れたお薬のひとつであることに変わりないんですけど…。
どっちがいいの?
じゃあ、結局どっちがいいのよ!という話になりますが…
医薬品が医薬品と認可されるためには、手間と時間とお金がかかります。
一つの新薬を開発して、発売されるまでの平均年数は、10年です。
まあね、手間と時間とお金がかかってるから、有効でない薬剤を使い続ける…というおそれはあります (^。^;)
もちろん、再評価(発売後一定期間を経て、臨床上本当に有効か調べなおす)制度がありますので、国も監視の目は光らせていますが、国が信用できるかというと…と、どうどうめぐり。
ま、通常そこまで考えなくてもいいでしょう。
そういう場合もありますが、ほとんどのお薬は、いろんな病気に、ちゃんと効いてる、効く可能性の高いお薬ですので、ご安心ください。
厚生労働省や、製薬メーカーのまわしものではありません(笑)
クレメジンが医薬品だというのは、それだけの投資をしても、利益があがるだけの確実な効果があり、そのようにお薬が評価される、と製薬会社が判断したからだ、とも言えます。
しかし、劇的な効果を得られなくても、他に有効な薬剤や、治療法が少ないわけなので、何もしないよりはマシかも、というレベルでも、使ってくれるだろうと判断しているのかもしれません。
それでも、通常の活性炭が腎不全の治療に使用されないことを考えても、薬剤としてみると、クレメジンの効果はネフガードと比較して高いと考えてよいと思います。
ただし、猫さんの場合、少し違う考え方もできると思います。
前述したように、人間よりもクレメジンの効果は猫さんのほうによくあらわれるようです。
ネフガード、ヘルスカーボンの効果も、人間に比較して、高い効果が得られるのであれば、腎不全の進行を遅らせるだけの効果は得られるのではないかと思います。
(実際、実験の結果、効果が得られたから売り出してるわけですもんね)
人間との効果の違いが、体の大きさによるものか、もともと腎臓の状態が悪いことに強い猫さんたちの体の構造によるものかは私にはわからないのですが…
猫さん一人に発生する老廃物の量が10として、クレメジンはたとえば15の量を吸着する力があり、ネフガードは10の量吸着する力がある。
となると、クレメジンとネフガードの効力の差はあらわれない…そう考えることもできます。
獣医さんがとくにどちらかを奨めないことを考えても、はっきりと目に見える差はなかなかあらわれないのではないかしら。
猫さんは人間よりもっと個人差も大きいようですし…
透析へ移行することができない以上、生涯、活性炭製剤を服用しつづけることになりますし、その猫さん個人に対する作用と副作用の現れ方を見て、どちらにするか決定するのでかまわないのではないでしょうか?
あるいは、最初に宣言した話と矛盾しますが、飼い主さんが、自然原料のほうがよいと思う、それも立派な選択の理由だと思います。
明確な差がないのならば、患者さんのなんとなく良いと思う治療法を選択するべきだし、患畜さんの場合は、飼い主さんがなんとなく良いと思う治療法を選択するべきだと思います。
ちなみに、私は、クレメジンを与えると思います。
それは、クレメジンが、慢性腎不全の進行を止めるということが、医療用医薬品であるがゆえに、細かく決められた試験によって、明確に数値として示されてるからです。
ネフガードの情報は、食品という性質上、あいまいな部分が多い…私にとってはその情報の明確度が判断基準だってことになります。理系ですから(笑)
すみません、結局答えになってなかったですね (^_^;)
疑問いろいろ
①:製薬メーカーからの回答についての考え方
基本は、回答はあくまで参考までに、ということです。
メーカーの回答が一定しないというのは、人の医療に関しても、よくあることなのです。
なぜかということをご説明します。
問い合わせた時期によって、回答が違うことがあります。
医療の世界は日々進歩してます。新しい説が毎日出てます。そんな世界です。
また、回答者にもよります。
なぜなら、医薬品についての問い合わせは、はっきりとした回答のあるものばかりではありません。
こうかもしれないし、こうかもしれない、という回答しか出せないものも多いのです。
だからいい加減か、というとそうではありません。
生き物の体が、異物(薬品など)にどう反応するかということが、100%予測がつかないからなのです。
「新薬は10年たってから自分で使用しろ」とも言われます。
発売後10年で、やっと、ほとんどすべての副作用が出揃うからです (^^;)
ということで、基本的に人間のものも作ってる医薬品メーカーの場合、そういい加減なことを答えてるわけではないのね、と信じてあげていいと思います。
メーカーからの答えに統一性がない場合は、医学・薬学の専門知識があれば、メーカーからの回答と、自分の知識、検索された文献などをあわせて考え て、自分なりの回答を出すことができますが、そういった知識がある方ばかりではないと思います。
ネットでみ んなの知恵をあわせて考えるっていうのも手ですし、同じ成分のものを複数メーカーが出してるなら、それぞれに回答を求めて、戻った回答をあわせてみるというのも手ですし、時期をずらして聞いてみるというのも良いかもしれません。
②:すりつぶし可と不可
上述したように、ヘルスカーボンが包接化合物なら、水(水素二つと酸素一つで構成)が、かき混ぜても酸素と水素にわかれないように、物理的な方法…すりつぶすなどなどで、壊れちゃうようなもんなじゃないですね!ですので、アルギン酸との結合はそのまんま、ということになります。
そして、ネフガードのほうは、クレメジンほど穴にこだわっていないので(笑)、穴がつぶれてしまう、変形してしまうということは微々たる問題で、穴はあちこちあいているため、つぶすことで、かえって穴あき面があっちこちにできて(表面積が増えて)、いいってことなんでしょうねえ…曖昧なことで申し訳ないですが、そんな感じだと思います。
ところが、クレメジンは特殊な製法で整理整頓した同じ大きさの穴をあけてるわけなので、当然すりつぶしちゃったらいけませんよね。
③:与える回数
あまり気にしないでよいのではないかと思います。
一回投与と二回投与の差がない、のくだりのあたりは、なかなか、一般の方だとおわかりになられないのではないかと思います。
一回投与したクレメジンはしばらく腸内に留まります。
マウスによる実験結果では24時間後にやっとすべての量が便の中に排泄されます。
腸の中を循環している…すなわち、腸内をうろうろしてる毒性物質を、同じようにうろうろして吸着します。
腸の中を一日にうろうろしてる毒性物質は限られます。
それを吸着するクレメジン量も限られます。
ということで、一回投与時も二回投与時も、毒性物質の吸着量に差はない、と考えられる!
ただし、体の中に入った食物がどう消化され、毒性物質が作られ、クレメジンがどの程度どの部分にどう留まるか、ということを、100%予測することはできませんし、100%の確立で物事がなるということはないですよね。
…この言葉も何度も出てきてすみません (^。^;)
でも、そうなんですよ。
しかーし、患者さんは医療に100%を求めるんだよね。
私自身も、自分や人間家族や猫家族が患者ならそうしてしまう…ムム。
あ、話がそれました。
ということで、一回でも良いところ、より完璧を求めるために一日一回ではなく、ニ回投与をすすめているのではないかと思います。
呉羽化学の言うところの、食事時投与も、間違いではありません。
常に食餌と共にクレメジンを投与すれば、毒性物質が発生したとき常にクレメジンが共にあるので、それはそれで合理的です。
トータルで見るか、その都度見るかってことですね。
てことで、両者の言っていることは、どちらも間違いではない…ということは、おわかりいただけたでしょうか。
この場合のメーカー側の回答の差は、メーカーとしてのあり方にあるのではないかと思います。
あくまで製造メーカーで、物質そのものの性質から単純に導かれる予測を出したのが呉羽化学。
大手医薬品メーカーであり、販売メーカーゆえに、エンドユーザー、すなわち患者・飼い主の声も、使用している獣医さんの声も反映されやすいので、物質の性質をちょこっと広めに考えて回答したのが三共。
臨床上、すなわち本当にいろんな猫さんが食べて、獣医さんが診察して始めてわかる様子をみて回答してくれたってことですね。
回答にある、データがあるわけではない、というのは、文献に載っけられるような、様式にのっとった実験をしてデータをとってないってことです。
④:水に混和後の投与
クレメジンについては、水にはまったく溶けませんが、吸湿性が明らかです。
また、吸湿することにより、明らかに吸着力が下がることもわかっています。
体内に入っても、もちろん水分と同居します。
けれど、そのために吸着力がなくなっちゃうほどの状態にはなかなかなりません。
その間に、ちゃんと毒性物質を吸する、すなわち、自分に与えられた仕事はしてるはずです。
体内に入ったら、いやでもいろんな物質を吸着しないといけません。
どうせなら、ちょっとでも吸着力が高いままで、体内に入れたいと思いませんか?
毒性物質を吸着するだけの時間も能力も、まっさらのまんまのほうが残ってそうだ!…と思いませんか?
ですので、混ぜたらとっとと食べさせましょう!
ネフガードについては、メーカー側が本体は活性炭そのものだ、とすりつぶしに関しての問い合わせで答えてるくらいなので、活性炭の性質として、明らかに吸湿するはずです。
どう考えたってとっとと食べさせたほうが良いと思います。
コーンスターチが入ってるってことで、水を含んだ有機物‥ものすごーく活性炭の作用を阻害するように思えます(笑)
やはりとっとと食べさせましょう。
この場合のメーカー側の回答についてですが‥
理由をちょっと考えてみましたが、のべつまくなし穴をあけてる性質上、少々水分が吸着されようが、まだまだ穴に余力があるので、毒性物質も大丈夫よ!といったところではないでしょうか?
とはいえ、水に混ぜて放置したことがない、とも言ってるわけなので、これは、回答した人の考えにすぎない、と思ったほうが良いかと思います。
吸着力の低下についてあまり深く考えてないのかもしれません‥
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